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2026.07.27サイト運用・技術

宿泊業の求人に、なぜ人が集まらないのか

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「求人を出しても応募が来ない」「せっかく採用してもすぐに辞めてしまう」——宿泊施設の経営や採用の現場に立つ方であれば、一度はこうした感覚を持ったことがあるのではないでしょうか。

その感覚、御社だけのものでしょうか。それとも業界全体がそうなのか。 実際のデータと照らしてみてみましょう。

本当に宿泊業の求人に対する応募者は少ないのか

結論をいってしまうと「宿泊業は人が集まりにくい」という印象は、正しい

厚生労働省の発表では、令和7年度の平均有効求人倍率は1.20倍 。一方で、観光庁によると宿泊業の有効求人倍率は6.56倍 。 これは明らかに高水準で、「宿泊業は人が集まりにくい」と言えるでしょう。

なぜ応募が少ないのか

では、なぜ求職者は宿泊業への応募をためらうのでしょうか。 昭和女子大学現代ビジネス研究所の論文によると、理由は一つではなく、次の4つが複合的に絡み合っています。

長時間労働とワークライフバランスの取りにくさ

宿泊業はその性質上、典型的な労働集約型産業とされています。月間の平均就業時間は全産業平均より長く、拘束時間も長くなりがちです。加えて繁閑の差が大きいため、「希望する日に休みが取れない」「有給休暇が取得しにくい」といった不満を従業員が抱えやすく、仕事とプライベートの両立が難しい環境になっています。

労働に見合わない賃金水準

拘束時間が長くハードな労働環境であるにもかかわらず、宿泊業の年間賃金は全産業平均より2割以上低い水準にとどまっています。

業務過多による高いワークストレス

人手不足そのものが、現場を「処理しきれないほどの仕事であふれている」状態に追い込みます。これが仕事と家庭の両立ストレスと重なり合うことで、転職意向をさらに押し上げてしまいます。

キャリア展望の不透明さ

非正規雇用の割合が高いことも、応募をためらわせる要因のひとつです。「この仕事を続けても、この先のキャリアがどう開けていくのか見通せない」という感覚は、応募段階から求職者の足を止めてしまいます。

せっかく採用しても、定着率も悪い

応募が少ないだけでなく、採用できた人材の定着にも課題があります。観光業の中核である飲食・宿泊業の離職率(2018年度)は26.9%で、国全体の離職率14.6%と比べると、実に2倍近い水準です。

厚生労働省の調査でも、「飲食店、宿泊業」やそれに付随する「サービス職」では、他産業と比べて転職希望者・転職活動移行者の割合が高いことが示されています。その背景として大きいのが、パートやアルバイトなど非正規雇用労働者の割合の高さです。非正規雇用が多いことで長期的なキャリア展望を描きにくくなり、そこに「有給休暇が取りにくい」といったワークライフバランスの欠如や、「処理しきれないほどの仕事量」による負担への不満が重なることで、より良い条件やキャリアを求めて他業種へ移っていく人が増えていると考えられています。

つまり、「応募が少ない」ことと「定着率が悪い」ことは、根っこの原因を共有した、ひとつの構造の裏表だといえます。

では、どうすればよいのか

ここまでの課題——低賃金、長時間労働、キャリアの不透明さ——に対して、ひとつの手がかりを与えてくれるのが、労働生産性の高い旅館の事例です。

一般的な宿泊業従事者(約800名)を対象にした調査と、労働生産性が高い小規模高級旅館の従業員を対象にした調査を比較すると、意識の面で明確な差が見られます。

  • 「仕事ぶりが適正に評価されている」と感じている割合は、一般的な施設で42%だったのに対し、高生産性の旅館では76%
  • 「仕事を通じて長期的な成長を実感できる」と回答した割合は、一般的な施設で51%だったのに対し、高生産性の旅館では81%

ある意味当然とも言える結果。 ここでいう「労働生産性が高い」とは、高単価で客室数が少ない施設を指します。 しかし、こういった体制が取れるのはごくわずか。それができるなら苦労はしない、とお思いの方も多いはず。

この差を説明するのが、「サービス・プロフィット・チェーン(SPC)」という考え方です。教育制度や待遇といった内部サービスの向上が従業員満足度(ES)を高め、それがサービス品質の向上と顧客満足につながり、最終的に組織の収益性向上に結びつくという流れを示す理論です。

そして、こうした高生産性旅館に共通して見られるのは、制度そのものの有無以上に、「経営陣が人財育成を大切にしているか」という姿勢そのものだという点です。経営者が従業員を大切にする姿勢を示すことで従業員の心をつかみ、従業員は高い勤労意欲とホスピタリティを持って顧客に接するようになる——この循環こそが、定着率と収益性の両方を押し上げているのです。

応募者が少なく、定着率も悪いという構造は、業界全体が抱える重い課題です。しかし、その解決の糸口は、大がかりな制度改革だけにあるのではなく、経営陣が従業員の成長と評価にどれだけ向き合うか、という日々の姿勢のなかにもあるのかもしれません。


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